🕯【わたしの本棚】は、
編集部員の本棚から月に1冊、おすすめの本を紹介していく連載コーナーです。
ジャンルを問わず、みなさんにぜひ読んでいただきたい1冊を選びます。
みなさんが、運命の本に出会うきっかけとなりますように。
今月も、心を込めてお届けします。
夜のじかん。
キャンドルの灯りに照らされながら、どっぷりと小説の世界に浸る。
わたしにとって、一番贅沢なひとときです。
お気に入りのドリンクを注ぐ音が、夜の読書じかんのはじまりを知らせるよう。
とっておきの本を読むのはいつも、たっぷりとじかんが取れる夜。
この夜読むのは、『ふたり、この夜と息をして』という小説です。
本を開けば、物語の世界にあっという間に飲まれていきました。
夜明け前のじかんに新聞配達のバイトをしている、高校生の夕作(ゆさ)。
ふだんと違うルートで配達をしていたある日のこと。
帰宅途中に通った公園で、女性がタバコを吸っているのを見かけました。
よく見ると、その女性はなんとクラスメイトの槙野。
人と深く関わるのが苦手な夕作は、槙野の「秘密」を知ってしまったことに動揺します。
目が合ってしまい、挨拶もせずに逃げるように家に帰りました。
数日後。
新聞配達の帰りのこと。
例の公園の前を通り過ぎようとすると、槙野に呼び止められてしまいました。
彼女が手に持っていたのは、夕作がだれにも言っていない「秘密」の物。たまたま見つけて拾ったのだと言います。
お互いの「秘密」に触れてしまった2人。
最初は動揺しつつも、だんだんと夜明けまえの公園で話をするように。
少しずつ少しずつ、それぞれの「秘密」を知りながら、不器用なやさしさで歩み寄っていきます。
夜明けまえの公園でストーリーが繰り広げられる、『ふたり、この夜と息をして』。
ふたりの不器用なやさしさに触れるたび、心が浄化されていくような感覚になっていきます。
今夜のお供に、『ふたり、この夜と息をして』はいかがでしょう。
🕯今回ご紹介した本
北原一、2022、『ふたり、この夜と息をして』、株式会社ポプラ社