📚 【わたしの本棚】は、編集部員の本棚から月に1冊、おすすめの本を紹介していく連載コーナーです。
ジャンルを問わず、皆さんにぜひ読んでいただきたい1冊を選びます。
皆さんが、運命の本に出会うきっかけとなりますように。今月も、心を込めてお届けします。
はじめて降りる駅。
予定までじかんがあったので、少しぶらぶらすることに。
歩いて5分ほどしたところで、一風変わった雰囲気を醸し出すお店をみつけました。どうやら本屋さんのようです。せっかくなので入ってみることに。
中に入ると、そこにはネコの小説や絵本がずらり。
レジの近くには、ネコの雑貨もあります。
ネコで溢れたお店の光景におどろきつつも、だんだんとこのお店に惹かれていきました。店内を歩いていると、カゴに乗って空を飛んでいるネコの表紙が目にとまりました。
『空猫アラベラ』
はじめて目にした本でした。
開いてみるとすべてのページにかわいらしいイラストが。文庫サイズの絵本のようです。
イラストが気になるこの本を、偶然出会えた記念に購入することにしました。
予定が終わったあと、この本が気になってまっすぐ帰宅。家に着いてすぐに、ページをめくりました。
主人公のアラベラは、猫天国に住んでいます。
ここに来てもうすぐ9年目です。
飼い主のおばさんのことが急に恋しくなったアラベラ。地上にもどることができ、ネコだけが乗れる「宇宙カゴ」に乗って、おばさんに会いに行くことにしました。
ふわふわと宙に浮く「宇宙カゴ」に乗ると、あっという間におばさんの家に。なつかしい家を目の前にして、アラベラはうれしさを抑えられません。一目散に家の中に入っていきました。
ネコ以外の生き物からはアラベラの姿は見えないので、ずんずん家の中を進んでいきます。すると寝室に、見覚えのある姿が。
ついに、おばさんと再会です。ベッドですやすやと眠るおばさんの横にもぐりこむと、なつかしさのあまり泣きそうになりました。
次の日。
家のなかを歩いていると、台所の壁にアラベラの絵が描かれていることに気がつきました。おばさんが、描いてくれていたのです。
いなくなってしまった後も、思い続けてくれていたおばさんの気持ちに触れて、アラベラはまたうれしさのあまり涙が込み上げます。
そんなある日のこと。
おばさんはネコ・ワズライという病気にかかってしまいます。
おばさんの病気を治すためには、またネコと一緒に住むのが一番だと考えたアラベラ。
じぶんのことを大切に考え続けてくれていたおばさんを助けたいという思いで、おばさんと一緒に住んでくれるネコを探す旅にでかけることにしました・・・。
アラベラとおばさんの、お互いを思い合うやさしさが描かれた『空猫アラベラ』。
読んでいくうちに、私の心もすこしやさしくなっていくような気がします。通りすがりのお店で偶然出会ったこの本が、今では忘れられない大切な1冊です。
🐈 今回ご紹介した本
アティ・シーヘンベーク・ファン・フーケロム作、野坂悦子訳、2020、『空猫アラベラ』、株式会社本作り空Sola