Lisa
今まで我が家のコーヒー豆は、専用ミルではなく、ミキサーに付属していた小さな電動ミルで「ゴゴゴ!」と景気よく砕かれていた。粒度?均一性?そんなものより勢いとスピードである。けれど、Kazu先生の珈琲講座を受け、ライブ配信で知識を少しずつアップデートしていくうちに、「道具」という底なし沼の存在に、わたしは静かに気づき始めてしまった。気づけば、ドイツ製の高級コーヒーミルを比較検討し、レビューを読み漁り、4万円超えの世界へ片足を突っ込んでいる。危ない。これは危険区域だ。コーヒー好きの“こだわり”という名の密林は、一度入ると簡単には戻れない。猪突猛進型のわたしですら、さすがに価格表示を見て一時停止した。そして、ふと我に返る。「……家にあったじゃん」発掘されたのは、貝印のコーヒーミル。なんとも日本的な、実直な佇まいだった。たぶん、こういうのでいいのだと思う。しばらくはこの相棒と遊びながら、豆の違いを知って、湯の温度に迷って、挽き目に悩んで。その先で、もしまたご縁があれば、最終駅・COMANDANTEにたどり着けばいい。けれど結局のところ、いちばん大事なのは道具ではなく、「豆」なのかもしれない。昔、日吉の 珈琲文明 で、マスターがそんなことを言っていた気がする。あのときは、ふうん、と聞き流していた言葉が、いまになって、じんわりと舌の上に戻ってくる。まるで、少し冷めた珈琲のあと味みたいに。
2026/05/10